2019年10月11日1版
日本における菌血症由来のメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の遺伝子型による特徴の違い
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は日本でも最も検出される薬剤耐性菌であり、皮膚軟部組織感染症、肺炎、菌血症の主要な原因菌であります。近年、日本の黄色ブドウ球菌における MRSA の割合は減少傾向であるが、我々の菌血症の先行研究では院内感染型(hospital-associated MRSA: HA-MRSA)が減少し市中感染型(community-associated MRSA: CA-MRSA)が増加していることが明らかとなってきました。HA-MRSAとCA-MRSAでは薬剤感受性や毒素に違いがあると言われていますが、全国規模での調査は行われていません。感染症の原因菌の全国的なサーベイランスとしては、日本化学療法学会、日本感染症学会、日本臨床微生物学会の三学会合同抗菌薬感受性サーベイランスが実施されており、全国の医療機関から菌株を収集して解析しています。しかし、菌血症についてのサーベイランスは実施されていません。今回、日本感染症学会の第1回(2018年度)感染症臨床研究促進助成を長崎大学が受け、菌血症由来の MRSAの解析を行うこととなり、既存試料・情報を提供することとなりました。実施にあたり長崎大学の医学倫理審査委員会の審査を受け、研究機関の長より適切な研究であると承認されています。
研究の目的
本研究では全国の医療機関で血液培養から検出された MRSA の菌株を収集して薬剤感受性試験および遺伝子解析を行い、CA-MRSAとHA-MRSAに違いがあるのかを検討します。本研究でCA-MRSAとHA-MRSAの違いを明らかにできれば、遺伝子検査を実施せずに薬剤感受性などからCA-MRSAとHA-MRSAを区別できる可能性があります。
研究の方法
・対象となる方について
2019年1月22日〜2019 年 9 月 30 日に京都府立医科大学附属病院に入院しメチシリン耐性黄色ブドウ球菌による菌血症、肺炎患者の診断を受けられた方
・研究期間: 2019年1月22日から2020年03月31日
・方法
当院に入院されメチシリン耐性黄色ブドウ球菌による菌血症患者の治療を受けられた患者さんの診療録(カルテ)からの情報を調べます。
・研究に用いる試料・情報について
情報:施設名、検体番号、保存番号、提出診療科、提出日、提出時期(外来/入院48時間以内/入院 48時間以降)、入院からの経過日数、患者情報(性別、年齢)、菌血症の原因(感染性心内 膜炎、CVカテーテル感染症、肺炎、皮膚・軟部組織感染症、腹腔内感染症、尿路感染症、その他、不明)、菌株同定機器、薬剤感受性(機器名および各施設での結果)
試料:血液培養で検出されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌
・外部への試料・情報の提供
長崎大学へMRSA臨床株を郵送で送付し更に詳しい解析を検索してもらいます。提供の際、氏名、生年月日などの患者さんを直ちに特定できる情報は削除し、提供させていただきます。
・個人情報の取り扱いについて
患者さんの血液や病理組織、測定結果、カルテ情報をこの研究に使用する際は、氏名、生年月日などの患者さんを直ちに特定できる情報は削除し研究用の番号を付けて取り扱います。この情報はインターネットに接続できないパソコンに保存します。このパソコンが設置されている部屋は、入室が管理されており、第三者が立ち入ることができません。
また、この研究の成果を発表したり、それを元に特許等の申請をしたりする場合にも、患者さんが特定できる情報を使用することはありません。
なお、この研究で得られた情報は研究責任者(京都府立医科大学 麻酔科学教室 清水優)の責任の下、厳重な管理を行い、患者さんの情報などが漏洩しないようプライバシーの保護には細心の注意を払います。
研究組織
提供先 研究責任者・代表(統括)者・担当者
長崎大学病院 検査部 助教 賀来 敬仁
お問い合わせ先
患者さんのご希望があれば参加してくださった方々の個人情報の保護や、研究の独創性の確保に支障が生じない範囲内で、研究計画及び実施方法についての資料を入手又は閲覧することができますので、希望される場合はお申し出下さい。
お問合せ先と受付時間
京都府立医科大学附属病院 麻酔科学教室
助教 清水優
電話:075-251-5111(内線:麻酔科外来:受付時間:9 時から 17 時まで)
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